’65年~’69年の和製ポップス市場
再三述べたが、日本のGSで最初にレコード化されたのは、’65年5月の
スパイダースの”
フリフリ”である事は、2番目が同9月の
ジャイアンツ(後の
アイドルス)の”
恋愛射撃隊”、
ブルーコメッツの”
サンダーボール”は、翼’66年2月であった。この年から多くのGSが輩出され、GSのデビューは’69年まで続くのである。
ここまでがGS時代となり、当時の和製ポップスシーンは、ほぼ彼等で彩られる事になる。
これも再三述べているように、’70年に入るとほとんどのGSが解散し、残ったGSも歌謡曲、フォーク、コミックバンド化し、実力あるGSは、ニューロック化していくのである。
GSとしての最後のシングルが、’72年8月のブルコメの”
雨の朝の少女”であった。
正確な時期は忘れたが、’68年の終わりから’69年夏頃までにかけて行われた『GSランキング』は、大体のGSが出揃った時期であり、貴重な資料となりうると思う。
これは、「チョコで選ぼうGS日本一ランキング」というキャッチで、明治製菓のチョコのキャンペーンの一環として行なわれたものである。買ったチョコの裏紙にバンド名を書いて郵送投票をするという、ファンの熱烈さ競争を示すものであった。投票したのは、ほとんど若い女の子であろうし、レコード売り上げ等とはまるで縁のない順位とも言えるが、文化放送で故・
土居まさるの司会でこのランキングに基づき番組が運営された。
毎回GSの曲をラジオで流すので、自分はこの番組を聴いていた。中には、
フォーリーブスとか、
フォーク・クルセダーズや
シューベルツなど、GSでないバンドまで投票されていた。カレッジ・ポップスのフォークグループも多かった。許せないのは、
クレイジー・キャッツや
ドリフターズのようなコミックバンド、
ピンキーとキラーズや、
ペドロ&カプリシャス、中には
ロス・プリモスのようなムードコーラスまで投票している勘違いも甚だしいのもあった。
また、レコード未発売のGSまでが、かなり投票されていたのには驚いた。
GSフリークの自分でも、知らないバンドが結構あった。
投票されたバンド数は400近くにも上ったが、GSと呼べるバンドは、300にも満たない。その中でレコード会社からレコードを出したGSは、さらにその半分ぐらいであろう。
投票時期から言って、草創期のGSが一部を除けば、その人気が衰退していた事もやむを得ない。
何度も言うようだが、投票したのは若い女の子中心であろうから、純然たる人気やレコード売上を基準にしている訳ではないが、この時期の一応の指標とはなるであろう。
この順位を基準にして、自分が「日本のGSの歴史」として、分類してきたGSを総括する。
カレッジ・フォークグループとレコードを出していないGSは除く。
*順位は、『GSランキング』によるもの 曲は最も売れた曲
A級GS(人気先行型)1位 タイガース 花の首飾り 所謂10大GS
2位 テンプターズ エメラルドの伝説 所謂10大GS
3位 オックス スワンの涙 所謂10大GS
4位 スパイダース 夕陽が泣いている 所謂10大GS
5位 ワイルド・ワンズ 想い出の渚 所謂10大GS
6位 ヴィレッジ・シンガーズ 亜麻色の髪の乙女 所謂10大GS
9位 カーナビーツ 好きさ好きさ好きさ 所謂10大GS
10位 ジャガーズ 君に会いたい 所謂10大GS
13位 ゴールデン・カップス 長い髪の少女 所謂10大GS
21位 ブルー・コメッツ ブルー・シャトウ 所謂10大GS
32位 パープル・シャドウズ 小さなスナック 1曲でA級入り
60位 ズー・ニー・ヴー 白いサンゴ礁 1曲でA級入り
69位 バニーズ 太陽の花 エレキの神様
138位 シャープ・ファイブ 哀愁の六本木 男には絶大な人気
B級GS(実力派)14位 アダムス 旧約聖書 元アウト・キャスト
15位 ガリバーズ 赤毛のメリー 1枚で惜しまれるGS
17位 フィンガーズ 少女へのソナタ 成毛滋在籍のバンド
19位 モップス 朝まで待てない 後にニューロック
20位 フローラル さまよう船 細野晴臣在籍のバンド
24位 スウィング・ウエスト 雨のバラード ウエスタン以来の名門
26位 リンド&リンダーズ 銀の鎖 関西GSナンバー1のバンド
27位 ピーコックス 妖精の森の物語 ピーコック革命の旗手
28位 ビーバーズ 君なき世界 石間秀樹在籍のバンド
30位 タックスマン 恋よ恋よ恋よ 上月潤在籍のバンド
39位 ダイナマイツ トンネル天国 山口富士夫在籍のバンド
55位 サニー・ファイブ 太陽のジュディ フォーク系GS
56位 シャープ・ホークス 遠い渚 安岡力也在籍のバンド
58位 アイドルス 夕陽よ燃えろ エレキバンド、ジャイアンツの後身
59位 フラワーズ ラスト・チャンス 内田裕也が作ったバンド
75位 フォー・ナイン・エース 悲しみの果てに ジョー山中在籍のバンド
76位 ジャイアンツ ケメ子の唄 アングラの影に隠れた実力派
78位 ランチャーズ 真冬の帰り道 名門エレキバンド
81位 ハプニングス・フォー あなたが欲しい 実力派ラテンバンド
82位 リード 悪魔がくれた青いバラ 日系2世の実力派
83位 レオ・ビーツ 霧の中のマリアンヌ 隠れた実力派ラテンバンド
84位 スーナーズ ミッキーズ・モンキー 来日フィリピンバンド
93位 ボルテイジ エミー・マイ・エミー R&Bナンバー1バンド
99位 ジェノバ サハリンの灯は消えず シベリアサウンド
110位 アウト・キャスト レッツ・ゴー・オン・ザ・ビーチ 音楽的幅の広さ日本一
120位 ハーフブリード 不思議な夢 全員ハーフのソフトロック
146位 ヴァンドックス 熱い砂 ロカビリー・エレキバンド
148位 レンジャーズ 赤く赤くハートが カルトGSの決定盤
155位 サベージ いつまでもいつまでも フォークロックの老舗
156位 シルビー・フォックス 風がさらった恋人 東京ベンチャーズの後身
210位 シェリーズ 想い出のシェリー 遅れてきた実力派
C級GS(人気・実力共イマイチ)8位 ヤンガース マイ・ラブ・マイ・ラブ アップル・エイジの旗手
11位 アップル 王女の真珠 意外な人気のアップル・エイジ
12位 スケルトンズ 星の王子さま メルヘンの極致
22位 ブルー・インパルス 太陽の剣 アップル・エイジの旗手
33位 ライオンズ すてきなエルザ タイガースのライバル?
34位 ポニーズ ブルー・エンジェル 極上ポップス
35位 バロネッツ サロマの秘密 北方志向サウンド
36位 ピーターズ 愛のセレナーデ ロック・パイロットの前身
37位 ラブ イカルスの星 越路吹雪のライバル
40位 タローズ 誰かに話したい 元祖ヴィジュアルバンド
41位 リリーズ ドアをあけて メルヘンチックなバンド
44位 サイレンサー 恋の夜汽車 コスモス・ファクトリーの前身
45位 ブレイズ 美しい愛の悲しみ 典型的なアイドルグループ
53位 デビィーズ 恋のサイケデリック サイケデリック・バンド
57位 テリーズ 想い出の星空 バニーズの弟バンド1
62位 フェニックス 恋するラララ バニーズの弟バンド2
85位 スコーピオン 星の天使 ワウワウ・サウンド
88位 ナポレオン 逢いたい逢いたい リンド&リンダーズの弟バンド
90位 スピリッツ 人魚の涙 アマチュアっぽいバンド
91位 ジェット・ブラザース 愛の祈り ヴォーカル・デュオ
100位 サマーズ 朝から晩まで ローカル・ガレージ
104位 ムスタング ゲルピン・ロック コミック的カルト
105位 フィフィ・ザ・フリー 栄光の朝 ソフトロック・バンド
130位 リバティーズ 渚に消えた恋 トニーズの後身フォーク系
130位 ビップス 初恋の湖 アマチュアっぽいバンド
137位 ダーツ ケメ子の歌 フォーク系バンド
142位 クーガーズ テクテク天国 スカートを履いたガレージ
146位 ワンダース 明日への道 尾崎紀世彦在籍のバンド
185位 エドワーズ クライ・クライ・クライ 初期ビートルズを狙った
194位 ルビーズ さよならナタリー 一応ガレージ
197位 クローズ 愛しているから サベージの弟バンド
207位 ブルー・ジーンズ マミーズ 田川譲二が率いバンド
210位 ターマイツ お友達でいつまでも 青春バンド
244位 ニュー・ジャガーズ 愛のアルツァート 宮ユキオの恨み節バンド
252位 ギャロッパーズ 銀のブレスレット レコードを出したGSで人気最低
D級GS(GSらしさの薄いGS)48位 ファンキー・プリンス おやすみ大阪 歌謡GS
87位 ルート・ファイブ 俺は天下の色男 アングラGS
101位 キングス アイ・ラブ・ユー 歌謡GS
118位 ダウン・ビーツ 三つの花 コーラスGS
134位 ムーンドッグス おねがいよ コーラスGS
139位 ベアーズ 港のドロシー マドロス物GS
164位 ファイブ・キャンドルズ 大阪の娘 歌謡GS
164位 バロン 恋の億万長者 アングラGS
199位 ハイローズ 君をはなさない 歌謡GS
224位 ホワイトキックス アリゲーター・ブーガルー コーラスGS
224位 チコとビーグルス 帰り道は遠かった コーラスGS
230位 リンガース 恋はふりむかない 歌謡GS
GSの歴史で紹介してきたGSのうち、「上記人気投票」から漏れているバンドの分類は以下である。さすがに、A級は皆入っている。
B級プレイボーイ シュビデビで行こう 知る人ぞ知る実力派
サムライズ 風船 ミッキー・カーチスガ作ったバンド
モージョ 欲張りな恋 ジャズ畑出身バンド
トーイズ お宮さん アングラだけでは惜しいバンド
バーンズ スカイ・パイロット 実力派インストバンド
ユニコンズ 運命 クラシックの名曲をアレンジ
日活ヤング&フレッシュ 青春ア・ゴー・ゴー 山内賢在籍のバンド
C級スカイ・ホークス 天国からのお迎え アングラだけでは惜しいバンド
オリーブ 君は白い花のように 遅れてきたカルトGS
ブラック・ストーンズ ヘイ・ミスター・ブルー・バード 解散第一号GS
ブルー・ファイア 夕陽のはてに ブルコメの弟バンド
サン・フラワーズ 花のサンフランシスコ 郷田哲也在籍のバンド
フレッシュメン バラは帰らない 橋幸夫のバッキング
マイクス ランブリンマン マイク真木のバンド
クラックナッツ 悪魔のベイビー 寺内タケシの弟外人バンド
マミーズ ブーガルーNO.1 ブーガルー旋風の寵児
D級P.S.ヴィーナス 青空は泣かない フォークロック・バンド
レモン・ルーツ 想い出のビアガーデン 元スケルトンズ
デイ&ナイツ バラをあの娘に コーラスバンド
ブルー・シャルム 抱きしめたくて 馬飼野康二在籍のバンド
マミローズ 灰色の空 フォークロック・バンド
ハローハッピー 朝日のみえる丘 フォークロック・バンド
キッパーズ 風のふるさと フォークロック・バンド
ホットミルク ハッシャバイ 宇崎竜童がマネージャー
イーグルス 昭和二世 アングラの寵児
ロビンフッズ 落第生バンザイ アングラバンド
レンチャーズ サイケ・カッポレ アングラバンド
キザーズ オケラの唄 アングラバンド
よくもこれだけのGSが、レコードを出せたものだ。CD化されておらず、プレス数の少ない曲は、プレミアムが付いている事は前述した。
1965年から72年までGSは存在し、その全盛期は’66年~’69年の4年間であった。短い期間ながら、日本独自の文化まで生み出し、後世に与えた音楽的影響は計り知れない。洋楽と歌謡を融合させた音がその基本であるが、ロック、R&B、トラッドフォーク、シャンソン、ハワイアン、ラテン、クラシック、ジャズ、ムード歌謡・コーラス、アングラなどありとあらゆるジャンルを包括した。
この時期に青春時代を送れたことは、自分にとってまことにラッキーであった。